■同窓会

 今日の勇者課は平和だった。
 どのくらい平和なのかというと、小林先輩がデスクでガンダムのプラモデルを作っているくらい平和だった。
 杉野さんは小さく鼻歌を歌いながらハタキ片手に掃除をし、俺は俺で先週までの業務報告書を作成していた。いつもの業務ではないということで、嘱託の石岡先輩は出勤していない。
 先週のヤマは久しぶりの魔王退治。完遂まで実に二ヶ月近くかかった一大プロジェクトだった。二ヶ月分の冒険譚となれば軽く小説一冊分はある。一応毎日日報をつけていたものの、それを報告書としてまとめるとなると一苦労だ。俺はパソコン画面を睨みつつ低く唸る。先日、社長の気まぐれで導入された勇者課専用報告書フォーマットが憎い。どうして縦書きなんだ、これ。
 なお、杉野さんが掃除しているのは趣味ではなく立派な仕事だった。ここ、勇者課には特殊で特別な倉庫がある。商売道具が詰め込まれたそこには、コスプレにしか見えないファンタジーな鎧があったり、実際に切れる刀剣があったり、実際に発砲できる銃火器があったり、こっちの世界で使えば魔法にしか見えないアイテムがあったりと実に珍妙で物騒極まりない。もちろん一般の皆様にはお見せできる代物ではないので、社専属の清掃員を入れられない。だからここの掃除と整理整頓は必然的に俺達の仕事となる。もっとも、普段はそんな暇はないので、こういう閑散期にやるしかないのだけれど。
 そして小林先輩のガンプラ作りは仕事ではない。ただのサボりだ。けれど仮にも上司を諌めることなどできるはずもなく、俺は疎ましげに見るだけだ。できたとしても戦士職の腕力で物理的に捻じ伏せられるのは目に見えている。
 いいんですけどね。先の仕事では小林先輩大活躍でしたから。
「小林先輩」
 報告書作成が煮詰まって、頭を掻きながら顔を上げて、組み立てたパーツに筆で何やら塗っている我らが上司に声をかけた。
「んー?」
「俺らの仕事って口外していいもんなんですかね?」
 軽く言ってみたものの、触ったら爆発しそうなくらい心臓がバクバクいっていた。
 俺達は勇者課。誰でも知ってる大企業の慈善事業を行う部署で、危機に瀕した世界を救うお仕事だ。広いようで狭い業界ではそんな慈善事業のことは公然の秘密となっていた。同業者に会ったとしても、それが勤務時間外であれば仕事の話は極力しないようにしている。簡単にゲームのような世界に行けるとか、そこでは魔法を使えるとか、そんな夢のような話が一般に広まったらどうなってしまうのだろう。向こうの世界の平和のためにも、俺達の世界の平和のためにも口外してはならないのだ。
 入社以来、そういう心構えで生活してきた。無数の部署と支社と子会社を抱えるこの大企業において、孤高の部署。それが勇者課だ。
 そんなわけで、俺の一言は仕事のタブーに触れることなのかもしれないと思ったら、身体に無駄に力が入ってしまった。
 小林さんは手を止め、俺の目をじっと見る。その目に射竦められて更に緊張する。何しろこの人は百戦錬磨の戦士だ。獰猛な獣もその眼力だけで追い払ったことすらある。今の俺もまさに蛇に睨まれた蛙、獅子を前にした子兎。その手の平筆を横に薙いだら俺は胴から二つに分かれるのかもしれない。
「いいよー」
 しかし、上司の返事はあまりにも軽かった。ふいっと目を逸らし、再び筆を動かし始める。
「門外不出の秘密の職業じゃねーもん。うちの親も知ってる」
「え?」
 あまりにも呆気なく、意外な返事に変な声が出た。
「うちも知ってますよー」
 と、掃除を終えたらしい杉野さんが三角巾を手にやってきた。着けているエプロンと袖カバーは我がが社の社章入りの支給品だ。普段の弓兵姿も凛々しくてかっこいいが、こういう家庭的な姿もまた素敵である。
「だって特殊な仕事ですもん。前もって業務内容伝えておけば、何かあった時に困りませんからね」
「大原言ってねぇの? それだけ傷跡作って帰省したら親は心配するだろ」
 と、小林先輩は平筆で俺の腕を指す。ワイシャツをまくった素肌には、細かい傷跡がそこかしこに見えている。大きな傷は概ね魔法で治してしまうが、時々跡が残ってしまうのだ。もっともこれはホイミしか使えない俺が未熟な証拠であって、もっと高度の魔法を使えばこの傷跡も綺麗に消える。
 たしかに普通だったら心配するだろうけど、うちの親は俺のバイク趣味を知っている。息子が多少生傷作ってきたところで、「またか」という程度の反応しかしない。大怪我がしなければいい、事故を起こさなければいいという考えだ。父親も同じ趣味だと理解があっていい。
 そんなことを言うと、「インドア派の俺にはわからん世界だ」と小林さんは呆れていた。たしかにプラモ作りで怪我なんて聞いたことない。
「まあ親以外に言ったところでどうにもならないって。だってさ、勇者になって世界を救ってますとか同業じゃないと信じねぇよ」
「そうですか……」
 そうですよね、誰も信じないですよね。せいぜい「ゲーム脳」と笑われるだけですよね。案外あっさりとした返事に安心したような、少し残念なような気持ちで脱力する。突っ伏したデスクの上には日報が散らばり、ノートパソコンは相変わらず書きかけの報告書を表示したまま。
「大原君、今週末に高校の同窓会があるんですって。社の名前を出したらすごい食いついてくるからって悩んでるみたいなんですよ」
 杉野さんの言う通りだった。誰でも知ってる大企業。給料もいいし待遇もいい。採用人数が多いため広く見える門戸は実は狭く、一流大学を出た優秀な人間が多く勤務している。つまりそこに就職している俺もそういう人間の一人に見えてしまうわけで。同窓会だのコンパだの行ったらそれはもう食いつきがいいだろう。特に女子に。
「本当なら俺、こんな大会社に入れるはずないですし」
 ぼやいた俺に、返ってきた答えはこれまた軽薄なものだった。
「んじゃテキトーに言って名刺でも見せれば? この前課名変わったし、名前だけじゃ内容なんてわからんよ。ごまかせ」
 小林先輩のいい加減さは時々見習いたくもあるけれど、見習ったら見習ったで社会人としてどうだろうと思わなくもない。
 ひらひらと振って見せている名刺には「総務部総務二課」と、業務内容の検討がつかない課名が書いてあった。


 同窓会と言っても人数が多いだけの飲み会だ。場所は広い居酒屋で、セレモニーのようなものも恩師の挨拶ももちろん式次第もなかった。乾杯が終わり、三十分も過ぎればめいめい勝手に席替えをして話したい相手のところに行ってしまう。俺はどうしようかと二杯目のビールを飲みつつ考えていたら隣に人が座ってきた。
「久しぶり」
 和田だった。三年間クラスが同じで、辛うじて名前は覚えている程度のクラスメイトだ。特に親しかったわけでもなく、会うのは卒業以来だ。
 俺が覚えている和田は、痩せっぽちで頼りない感じの男だった。影が薄いということはないが、特に印象に残っているエピソードもない。まあクラスに一人はいるようなタイプだった。それが今は筋肉もついて見違えた。一瞬誰だったかわからなかったが人懐こい笑顔は変わっておらず、それで思い出したようなものだ。
「おー! ひさしぶりー!」
 ほどほどに酒も入っていて、俺のテンションはいつもの三割増しだった。いや、五割だったかもしれない。和田相手にこんなに慣れ慣れしく話すことなんて、高校時代はついぞなかった。
「聞いたよ。すごい会社にいるんだね」
 ああ、またその話か。さっきから会社聞かれては驚かれるを繰り返していて、いささかうんざりしていた。わかってるよ、俺ごときが入れるような会社じゃないって俺が一番知っている。お前もそのクチなのだろう、と内心で呟きながらビールに口をつける。
「いや、それほどでも……お前、掛川出版なんだって? 大手じゃん」
 しかしその和田も俺に負けず劣らず、大手出版社に勤務と先程小耳に挟んだ。俺のことを言えた義理ではない。その話をしてくれたのは誰だっただろう。すっかり普通のギャルになってしまった副委員長だったか。
「うん、雑誌の編集やってる」
「へー、だけどその身体、出版社勤務に見えないよ。あんなにひょろひょろだったのにムキムキじゃん。別人かと思ったわ」
 ポロシャツの半袖から覗く二の腕は俺より二回りも太いだろうか。ジョッキを持つ腕は筋肉が盛り上がり、同性ながら逞しく思ってしまう。これならスポーツマンと思われてもおかしくない。
「ありがと」
 褒めたわけではないのに和田が照れる。
「もしかしてスポーツ誌の編集とか?」
 スポーツ誌なら取材やらで外に出る機会も多いだろう。適当に検討つけて言ってみたら、よく日に焼けた手を振って否定した。
「まさか。俺、ずっと文化部で図書委員だったの知ってるだろ。スポーツなんて全然縁がないよ」
 そう言えばそうだったなどと懐かしく思い出す。校庭からだと図書室がよく見えたのだが、ゆったりと仕事に勤しむ和田の姿をたびたび見かけていた。一応言い訳しておくと、あえて和田を見ていたのではなく、部活中にたまたま見えてしまっただけだ。
 そんな思い出話に花を咲かせていたら、唐突に和田が笑顔でこんなことを言い出した。
「ところで大原」
「ん?」
「もしかしてお前、勇者課?」
 凍りついた。いざ飲まんと持ち上げたビールジョッキはそのままで、顔だけ和田に向ける。漫画で言えばギギギギとかそんな錆付いた擬音が入ったことだろう。
「違ってた? 勇者課だよね?」
 真顔で黙ってしまった俺に和田が再度聞いてくる。幸いにして周りは話に興じる連中で騒がしく、和田の声は俺にしか届いていないようだった。賑やかな中、俺と和田の周囲だけドームに覆われてしまったかのようだ。言いようのない緊張と、凍りついた空気と、俺の冷や汗と、そして空気を読まない和田の笑顔。
「違っていま、せん」
 顔面から汗が噴き出る。まさかこんなところでその名前を聞くだなんて。
「お前、それどこで知ったんだよ」
 ずいっと顔を寄せて小声で聞くと、和田は俺の緊張なんて素知らぬ顔で「知ってるも何も」と明るい声で言い出した。こいつ、こんなに空気読めない男だったかな。どうせ聞いてないとは言え、こんなところで出していい話題じゃない。笑顔も消えて表情が引きつる俺だったが、和田の口から出てきたのは衝撃の事実だった。
「うちの親父、爺ちゃん亡くなって家を継ぐ前はお前んところの正社員で勇者課だったんだよ」
 俺の会社の社員で、同じ課で、つまるところ、それは。
「OB? 俺の先輩?」
「そう、そういうことだ」
 そして懐から一枚の紙片を出した。紙の黄ばみで古いものだということがわかる。俺に渡すと、「こっそり見てくれ」と耳打ちしてきた。正直言って男の耳打ちなぞ気持ち悪いだけなのだが、今の俺にはそんなこと考える余裕はなかった。
 それはL判サイズの写真だった。渡してきたのは裏返しだったようで、白い台紙に日付と「勇者課のみんなと」という一文が青いインクで書いてあった。
 和田とは反対側の隣の様子を伺う。隣にいる小須田はかつて好きだった副委員長を必死に口説いてる最中だった。俺に背を向け、熱弁を振るっているが副委員長は全く脈なしという有様は滑稽でもあったが、今はそれで助かった。
 そっと写真を表に返す。元はカラーだったのだろうが、経年劣化で薄っすらとセピアがかっている。背景上部は雲一つない空。中央には巨大なモノリス。その手前には横たわる巨大な竜の体。横に長くて体全体がフレームに収まりきっていなかったが、胴側に曲げた首でドラゴンであることがわかった。
 更にその手前に映りこんでいるのは四人のコスプレ集団だった。推定戦士、推定格闘家、推定魔法使い、推定僧侶。推定としているのは装備から大体こんな職業だろうと推測しただけで、実際のところはわからない。しかし多種多様とは言え、ファンタジー世界は割とベタなところがある。俺の推測は概ね外れていないだろう。
 そしてその四人の中に、少しだけ老けた和田がいた。その少し老けた和田は長いローブを羽織り、木の杖を持ち、胸にロザリオのようなアクセサリーを下げ、どう見ても僧侶だった。
「聞いていいか。お前の実家ってたしか寺だったよな?」
「うん。うちの親父、坊主なんだよ」
「そのまんまだ!」
 一度だけ三社面談に来ていた和田の父親を見たことある。スキンヘッドのいかつい体格で、高校の廊下を歩くその姿はまさに魔神かその筋の人だった。袈裟を着ていなければ誰も坊さんだと思わなかったに違いない。
「本職が僧侶ってありなのかよ」
「ありだよ。全然あり。異世界であっても自分の神を信仰し続ければ加護はあるそうだ。親父談」
 だからか。だから回復魔法を使える人材にリアル僧侶が多いのか。本職の僧侶だと俺のへなちょこホイミなんて目じゃない。僧侶職は世界によっては蘇生魔法も使えると聞いたことがある。
 この前の採用面接にいた寺の息子、仲間にしておけばよかった。そんな後悔もちらりと頭を横切った。何しろ当社の主力にしてたった一つパーティーは火力こそ有り余っているが、癒しの方面が弱い。それこそ俺のホイミが唯一の回復魔法。破壊は知っていても直すことは知らないのだ。
 しかし何故和田はそんなことを言い出したのだろう。父親の過去を代償に俺の仕事を聞き出し、こいつに何のメリットがあるのだろう。更なる疑惑が俺の中で渦巻く。
「まさかお前も掛川の勇者課? あ、でも出版社にはなかったような」
 考えられるのは同業者であること。しかし、いつぞやに杉野さんに見せられた勇者課設置企業一覧には出版社はなかったはずだ。ほとんどが大手のメーカーや商社が占めている。つまり、企業規模が大きすぎて、何をやっているのかよくわからない部署が一つくらい紛れていても平気な会社、というわけだ。存在自体がよくわからない部署に分類されてしまうのは悲しいが、一般の理解を得るのが難しい仕事柄、仕方ないことだと割り切っている。
 そして掛川出版は業界二位の規模を誇る大手中の大手だが、勇者課は存在していない。設立当時から、現在まで。
「いやまさか。俺はそんな大それたことできないよ」
 やんわりと否定され、俺は肩を落とす。ほんのりと期待はあったのだ。もしかしたら初めて同業者の友人が出来るかもしれないという、淡い期待だ。
 杉野さんは他社の勇者課の女性と合コンや女子会をしていると聞いた。仕事で同業の女性に会うたびに名刺を交換し、情報のやり取りをしているうちに発展していったという。恐るべきは女性の行動力だ。俺自身は人並みの社交性と思っているが、杉野さんには到底勝てそうにない。
 そしてそんな杉野さんの話を聞いているうちに、先輩以外の勇者課の知り合いがいたら楽しいかもしれないとささやかな憧れを抱いていた。
 だがしかし、そう簡単に同業者に会えるものでもない。今の俺にはプライベートでも会える同業の知り合いは0人。わかっていた。現実ってそう甘くないとわかっていた。
「実はこれ作ってるんだ」
 和田は鞄を引き寄せる。黒い革のビジネスバッグだ。プライベートな場になぜと思ったが、よくよく見れば和田はワイシャツにスーツを身に着けていて、ネクタイさえすればすぐにでも仕事にいけるような服装だった。仕事帰りか、それとも仕事の途中だったのか。そこは測れないが、今日は完全にオフというわけではなかったようだ。
 蓋を開け、他の人には見えないようにその中身を俺にだけ見せた。そっと上から覗き見る。
「これは……」
 そこには見覚えのある表紙があった。これまでに何度も世話になり、毎号しっかり購読しているあの雑誌。それは。
 異世界ウォーカー!
 誌名を口にしそうになって声を呑む。燦然と輝く誌名の下には中世ヨーロッパのようで違う風景が広がっている。煉瓦造りの城壁をバックに、燦然と輝く双剣を構えた女戦士の姿が写っている。この人知ってる。東雲堂勇者課の長谷川係長だ。
 異世界ウォーカーは最大手にして唯一の勇者事業の業界紙だ。様々な世界のガイドや他社勇者課の動向など、これを見れば全て丸分かりという代物だ。お世話になっていない勇者課はまずないだろう。
「これ作るのって現地取材がほとんどでさ、アウトドア、まあつまり山登ったり砂漠踏破したり野宿したりを繰り返していたらこんな身体になっちまった」
 和田は袖をまくって二の腕を見せる。腕を折ると見事な力瘤ができた。他誌の編集では決して身に付かない筋肉なのだろう。ああ、これなら野盗に襲われても安心だ。
「そうか、異世界ウォーカーの編集だったのか。日々世話になってるよ、マジで」
 不覚にも感動してしまった。同業者どころか、あの雑誌の編集者に出会えるとは思わなかった。しかも、何度も命を救われた雑誌だ。各世界の危険ポイントや政治情勢を取り上げてくれるから、俺達は余計なリスクを負わずに仕事ができる。ある意味、勇者課の人間よりも遥かに勇気と度胸がある人々なのかもしれない。この人たちがいるから今の俺達があるのだ。
 言葉にならず、和田を見つめてしまう。酒のせいで濡れた熱い視線とやらになっているはずだから、周りの人間に余計な誤解をされないといいけれど。
「これ、他の人には渡していないんだけど」
 と、和田が名刺を差し出してきた。社名は掛川出版、所属部署は異世界ウォーカー編集部となっていた。聞くと一般用の名刺も見せてくれた。そっちの名刺では部署名が「第六事業部」となっていて、何の仕事をしているのかわからないようになっている。考えることはどこの会社も一緒らしい。
 俺も仕事用の名刺を渡す。一般用とは異なり、こちらには総務部二課の後に「(勇者課)」と丸括弧付きで書き加えてある。まだまだ下っ端平社員なので肩書きはない。
「何か面白いネタあったら教えてくれよ」
「そっちこそ、特ダネあったら個人的に速報くれよ」
 肩を寄せ合う。同級生数十人も集まった中、たった二人だけしか知らないことがある。秘密を共有する仲間ができたことが嬉しかった。あの世界はどうだのあの会社はどうだのと、声は控えめながら会話が弾む。
 そんな俺達に、
「お前ら何こそこそ話してんの? ニヤニヤして気持ち悪ぃぞ」
 小須田が怪訝な顔をして聞いてきた。それもそうだろう。いい歳した男二人が至近距離で仲睦まじく言葉を交わしていたら、そう思わないほうがおかしい。
「仕事の話」
 そう答えたものの、話しかけてきた同級生の顔には更なる疑問が浮かぶ。
「お前ら業種違くね?」
 しかしそれ以上詮索することはなく、小須田はまた副委員長を口説きに戻る。俺達の話題よりもそっちのほうが大事なようだ。
 しかしまったく脈あるようには見えない副委員長の様子に、俺と和田はただ苦笑いするばかりだった。

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